まなぶ,みがく。

自分で学び、自分を磨く。学習と研鑽にいそしもう。

#小説

叫んでみるよ、これからは。

けして弱弱しい男ではないのだけれど、彼はとにかく物静かな男であった。 大きな声をあげない。そもそも口数が少ない。ぜったいに喧嘩はしない。 どんなに挑発されようが、無表情で受け流す。 そんな彼が、とても感情豊かな女に恋をしてしまうのだから、男と…

降るかもしれない雨をおそれて

雨降りが予想されても、彼は傘を持たない。 現在降っていないのであれば、必要ないじゃないか。 そう考えているのだが、勿論、予想が当たって雨が降れば、 濡れることも頻繁にある。ビショビショになる。 だのに。彼はその習慣を改めない。 未だ起きていない…

チューリップの花束を買う夜

都心の花屋で、チューリップの花束を買おう。 妻が好きな花が、チューリップだからだ。 大好きな妻の笑顔が、見たい気分の夜なのだ。 家のある地元で買うことも考えたけど、 都心の花屋で、わざわざ高い買い物をしたかった。 値段で愛情が決まるとも思わない…

ミルクティをもう一杯

海辺にある喫茶店のテラス席。 彼女は砂糖たっぷりのミルクティを飲みながら、 水平線を見つめていた。 水平線は、青い空と青い海の境界線なのに、 はっきりと線が認識できる、不思議ねぇ。 そこが宇宙への入口なのかしら。 だったら、私を宇宙に連れてって…

あたたかい風景

山に囲まれたその村に朝日が差し込むのは、 平野部に比べれば確かに遅い時間帯である。 けれども、朝日のもつエネルギーの大きさは、 水平線から顔を出した瞬間の朝日よりは、 はるかに大きくなっている。力強くなっている。 そんなあたたかい朝日を浴びるそ…