まなぶ,みがく。

自分で学び、自分を磨く。学習と研鑽にいそしもう。

叫んでみるよ、これからは。

けして弱弱しい男ではないのだけれど、彼はとにかく物静かな男であった。
大きな声をあげない。そもそも口数が少ない。ぜったいに喧嘩はしない。
どんなに挑発されようが、無表情で受け流す。
そんな彼が、とても感情豊かな女に恋をしてしまうのだから、男と女は、面白い。
ある日のデートの会話をのぞいてみよう。
「ちゃんと言ってくれなきゃ、わからないでしょ。
あなたが何を感じているのか、何を考えているのか。
あたしは知りたいのよ、感じたいの!」
「……そうだね……」
「もっと怒ってよ! 女のあたしにここまで言われて、
悔しくないの? 何も感じないの?」
「……感じなくもないけど……」
「けど? はっきり言ってよ!
感情をぶつけ合いましょうよ。
その先に、素敵な世界が待っていると思えないの?」
「……素敵な世界か……」
「う~ん、もういいっ!
あたしはガマンの限界。
あなたのペースには、ついていけません! サヨナラ!」
「さ、叫んでいるよ! 俺のこの胸の中では、叫んでいるんだ!
言葉が出てこないだけなんだ、言葉が思い浮かばない……」
「そうなの?」
「そういう男だっているんだ、感情表現ができない男。
むしろそのことをしないように生きてきたんだ、
いきなりそうしろと言われても難しいよ」
「ふ~ん」
「だけど。叫んでみるよ、これからは。
感情を、表に出すようにする!」
「じゃ、叫んでみてよ、今すぐに」
「……」
「できないの?」
「俺はお前を好きなんだよ~!」
声が裏返った。