夏旅のすさまじい記憶
無謀にも僕は、夏休みに一人旅をしたんだ、高3のときに。
大学を受験するとか言っておきながら、それはない。
逃げていたんだ、受験勉強から。
正当化できない旅を、それでも僕は強行した。
しかしそれは、すさまじい旅となった。
ある地域のワイド周遊券を買って、そのエリアをフラフラした。
夏だから、汗をかいて汚れる、臭くなる。
そんな姿をさらして僕はフラフラしていたのだ。
走る列車から飛び降りてみようか、などとも考えた。
青春期特有の迷い、悩み、もがきが、そこにあった。
旅をして、その苦しみを浄化させていたのかもしれない。
だとしたら、僕にとっては大切な旅であったのだろう。
大学受験には失敗し、その後2浪まですることになったとしても。
夏になると、あのすさまじい旅を思い出す。
自我の目覚めと確立にとって必要な旅。
今の僕には、どんな旅が必要なのだろう。