まなぶ,みがく。

自分で学び、自分を磨く。学習と研鑽にいそしもう。

ヒラタクワガタ

ヒラタクワガタを捕まえたのは、中学生のとき。
近くの雑木林のクヌギの木の根元を掘っていて、指一本しか入らない穴の奥に、クワガタがいるのに気付いて、人差し指を突っ込んで顎に挟ませて吊り上げてゲットした。
夏休みの早朝、ヒラタクワガタを手にした僕は帰り道、片思いの同級生とすれ違った。
ヒラタクワガタを捕ったよ ヒラタクワガタは、すっごく珍しいから貴重なんだよ
何度も口の中で呟いたけれど、彼女に向かって声を出すことはできなかった。彼女は笑顔で軽く頭を下げて、いい匂いを残して僕の横を通過した。
夏の終わりに、僕はヒラタクワガタを、友人のカブトムシのつがいと交換し、彼女には告白したけど相手にされなかった。
中学生の夏休みは、そんなふうな思い出を残し、僕の胸の片隅で、居眠りしている。都会で聞く蝉の鳴き声に、思い出が起き出して、こんな駄文を書かせている。