まなぶ,みがく。

自分で学び、自分を磨く。学習と研鑽にいそしもう。

旅立ち前夜

眠れない。
明日からの旅のことを考えると、
眠れない。
目を閉じて、
暗闇に大海原を思い描いても、
草原に羊を遊ばせても、
砂漠でダイヤモンドを探しても、
大空に舞う雲雀になって声高に鳴いても、
水槽の中で共食いするメダカを眺めても、
南国の市場の香辛料の匂いを思い出しても、
株価を表示する電光掲示を想像しても、
カラオケで絶唱する姿を浮かび上がらせても、
今夜の夕食のメニューをおさらいしても、
因数分解の公式を無理矢理証明しても、
右に左に寝返りうっても、
眠れないものは、
眠れない。
こんなに気持ちを高ぶらせる旅が、
これまでにあったろうか。
こんなに眠れない夜を過ごさなければならない旅立ち前夜が、
あったろうか。
自分の子ども時代を振り返る。
自分の青春時代を懐かしむ。
自分の成年してからを反省する。
そして未来を夢想する。
過去の堆積をいくら掘り起こそうと、
将来のロマンの物語を創造しようと、
眠れないものは、
眠れない。
白々と、
東の空が、
明るくなる。
眠らずに、
旅立つことに、
なりそうだ。
僕は、
新月の日に、
東に向かい旅を始める。